■有権者の“疑念”が生じた「大阪都構想」 「大阪都構想」が僅差で否決されたということで、このニュースで持ち切りとなっている。
「大阪都構想」はなぜ可決されなかったのか? このての改革は僅差の可決ではなく、大差が開いた可決でない限り成功とは呼べない。個人的に思うところをざっと書いてみたいと思う。
まず始めに思ったのは、有権者(大阪市民)からすると、賛成するべきか反対するべきか、よく分からない人が多かったのではないかと思う。
「大阪都構想」と聞くと、どこか清潔なイメージが浮かんでくるが、反対している政党は政治思想的に一枚岩ではなく、自民党と共産党が共闘しているというだけで、何が目的で反対しているのかよく分からないという人も多かったのではないかと思われる。
それに加えて、前回(5年前)は反対の立場だった公明党が、今回は踵を返して賛成の立場に回っているところにも不自然さを感じた人が多かったのではないかと思う。
大阪市が利権の温床になっていると言う以前に、今回の選挙構図自体、利権が温床になっているのではないか?という疑いを持たれたことも否決に傾いた1つの原因ではないかと思われる。
■「大阪都構想」よりも「大阪市役所土曜営業構想」 「大阪都構想」と言っても、大阪府が大阪都になるわけではないので、「大阪都構想」というのは正確に言うと以下のようになる。
「
大阪市を東京
都のようにする
構想」
要するに、大阪市のみを分割して東京都のようにするということであり、大阪市民にとって、具体的にどれだけメリットが有るのか分かりにくいという声も聞かれた。大阪市を4つに分けることによって無駄を省けると言うが、4つに分割する手間と経費を差し引くと、結果的にどれだけプラスになるのかという試算も少し曖昧だった。複数の市を統合して効率化を図るというケースはよくあるが、逆に分割して本当に効率化が果たせるのか?という意見も多かった。
しかし、1番の疑問点は、
大阪市を分割することによって、大阪市民の生活は良くなるのか?ということだった。
例えば、役所の土曜営業を目指すというような「
大阪市役所土曜営業構想」のような市民目線のシンプルな改革であれば、大阪市民は反対する理由がないので、まず間違いなく賛成可決だったと思う。市民の直接投票を行えば、9割以上の人が賛成すること間違い無しだ。
「大阪都構想」というような庶民が理解しにくい改革ではなく、まず、大阪市民の誰もが望んでいる改革を行えば良かったのではないかと思う。
「大阪都構想」が成功して、「京都構想」や「広島都構想」「福岡都構想」と広がっていくとは思えないが、「大阪市役所土曜営業構想」が実現すれば、日本中の役所が土曜営業になって便利になっていくことは間違いない。
「
役所を土曜営業にするとコストが上がる」と言う人がいるが、別に多少、コストが上がっても構わない。人が足りないということであれば新しく従業員を雇えばいい。そういうコストであれば、大阪市民も支払うのはやぶさかでないだろうし、そういう誰もが望んでいる改革を行うことこそが必要だったのではないかと思う。
■コロナ禍・デフレ下での「大阪都構想」 以上は市民目線での話だが、時代的に見ても、少し問題を孕んでいたことは否めない。
現在はコロナ禍の真っ只中であり、日本でも第2波が来る兆しが感じられる雲行きだ。そんな状況下で、「大阪都構想」を問うというのは、どこか“
今じゃない感”が漂っており、タイミング的にも悪過ぎたと思う。
今後、役所の人間がコロナ禍で多忙になることが予想される状況で、大阪市分割に伴う引っ越しや業務引き継ぎ等を併せて行うというのは、スケジュール的にも無理が有り過ぎたのではないだろうか。
少なくとも、住民投票はコロナ禍が落ち着いてからにするべきだったと思う。
維新の会からすると、吉村知事の人気と公明党が味方に付いたことで、「大阪都構想」は可決するという見通しが立っていたのではないかと推察するが、実際のところ、前回の投票であれだけ否定的だった公明党の人々は全員、賛成票を投じたのだろうか?
最後に、経済的な視点で「大阪都構想」を見てみると、やはり時期が悪かったとしか言い様がない。
現在がインフレ経済で景気が良い時代であるなら、「大阪都構想」も真っ当な改革と成り得たかもしれないが、残念ながら現在は長期デフレの真っ只中にある状況だ。
大阪市のドロドロの利権構造を破壊したいという維新の会の気概も理解できなくはないが、政治的順序としては、まずデフレを脱却して好況にすることが最優先事項となる。構造改革はその後に行うのがセオリーであるので、やはり時期的にも無理があったということは否めない。
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