■「所得制限」を設けるという愚策
衆議院選挙が終われば2度目の特別給付金が支給されるだろうことは多くの識者が予想していたが、まさか、18歳以下に限定されるとは想定の範囲外の出来事だったようだ。おまけに所得制限も設けられており、年収が960万円(月収80万円)以下の世帯に限定されるらしい。
自民党と公明党の折衷案という形で今回の給付金支給が決定されたそうだが、960万円にすれば、9割以上の世帯が対象となるので、「大きな分断は招かない」ということらしい。
「所得制限」を設けたかったのは公明党ではなくて、実は自民党の方だったらしいが、公明党の山口那津男代表は以下のように述べたと報道されている。
>「960万円の所得制限ですと、対象世帯(全世帯)のほぼ9割が対象になりますので、大きな分断を招かない。」
( )内は筆者注記
この理屈がよく解らない。例えば、年収500万円で「所得制限」を設ければ、多くの人が対象から外れるので「分断」を生むという理屈なのだろうか?
なぜ、年収960万円以上の世帯の子供に給付金を配れば「分断」を招いてしまうという理屈になるのだろうか? 普通に考えると、最も「分断」を生まない方策は、「所得制限」などを設けずに万人に一律支給することだと思えるのだが。
■「世帯年収」を暗に公表するという愚策
年収というもので国民を色分けしようとしている時点で、余計に「分断」を招いているように見えるのは気のせいだろうか? そんなことをすれば、誰が年収960万円以上の世帯なのかを公表することになり、返って「分断」を招くと考えるのが普通の感覚ではないだろうか?
日本では一昔前まで「長者番付」というものが公表されていた。それが非公表になった背景には個人情報保護の観点があったのかもしれないが、当時は税金を多く納めた人が表彰されるという、現代人が見れば悪趣味とも言えるような長者番付表が新聞にデカデカと公表されていた。
こういったものは、金持ちに対する嫉妬を招くという意味で公表されなくなったのではなかったのだろうか? そう考えるなら、年収1000万円世帯を暗に公表するような今回の給付金制度は、明らかに嫉妬を招く制度になる可能性を秘めており、その嫉妬感情というものが「分断」を齎すだろうことは火を見るより明らかだと思われる。「あいつの家は年収1000万円以上だ」ということでいじめに遭う子供も増えるかもしれない。
■「年齢制限」を設けるという愚策
そもそも、政府が「分断」というものに拘り忌避するのであれば、「所得制限」だけでなく「年齢制限」も廃止することが望ましい。国民の税金が原資と言うのであれば、18歳以下だけに給付するというのは不公平であり筋が通らない。コロナ禍によって貧困化しているのは18歳以下だけではないので、誰が考えても無理筋だと言える。
今回の給付金制度が貧困対策であろうと経済刺激策であろうと、18歳以下に拘る理由というものが全く理解できない。現金が5万円、商品券が5万円ということからも、経済刺激策という側面が有ることは否定できないだろう。
商品券を配ることを否定する向きもあるが、個人的には必ず消費される商品券を配ることは、それほど悪い政策だとは思わない。しかし、経済刺激策として商品券を配るのであれば、国民全員に対して配らなければ、効果が薄れることになる。
しかし、いずれにしても10万円というのは安過ぎると思えるが、その点を追及している人はあまりいない。「所得制限」や「年齢制限」に目が行って、「支給金額」そのものが盲点になってしまっているかのようだ。
現状を考えると、国民全員に100万円分の商品券を配るぐらいが丁度良いと思われる。それぐらいしないと、ここまで落ち込んだ景気はなかなか元には戻らない。
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