2020年09月20日

「働かざる者食うべからず」と「借金は返さなければならない」という言葉


■「働かざる者食うべからず」という言葉の意味

 新約聖書には以下のような言葉が書かれているらしい。

 「働こうとしない者は、食べることもしてはならない

 この言葉は、宗教的に怠惰な人の生活を戒めるための言葉だったのかもしれないが、20世紀になって、同じような言葉を使用する人物が現れた。それがソ連のレーニンだった。レーニンは共産党の機関誌「プラウダ」内で以下のように述べたとされる。

 「働かざるものは食うべからずは、社会主義の実践的戒律である

 この場合の「働かざるもの」は、聖書で言うところの「怠惰な人」という意味合いではなく、「働かない資本家」という意味合いで使用されたということになっている。

 共産主義社会では基本的に仕事を選べない。仕事は政府(?)が与えてくれるものなので、仕事は常に有り、その仕事を行わない者は共産主義者ではないという理屈になる。
 共産主義思想というのは、労働者の楽園思想というものを包含しており、労働者は労働によって望むだけの報酬を与えられるという考えが前提になっている。ゆえに、彼らにとっては「働かない者」は労働者ではないので、それが罪となり、「働かざるものは食うべからず」になってしまう。無論、「ノーメンクラトゥーラ」と呼ばれた特権階級はこの限りではない。

 日本で「働かざる者食うべからず」と聞くと、道徳・倫理的な言葉だと思われがちだが、レーニンが述べた通り、実は社会主義的な言葉という側面がある。

■「借金は返さなければならない」という言葉の意味

 ところで、「働かざる者食うべからず」は、財政再建肯定派の思想信条でもある。「借金は返さなければならない」という当たり前の倫理観が前提となっているので、この考えは広く日本に根付いているため、必然的に財政再建否定派は「怠け者」というレッテルを貼られることになる。

 しかし、「借金は返さなくてもいい」という言葉にも、2つの意味合いがある。本当に「借りたお金を返したくない」という怠け者の意見と、「国の借金を返す必要はない」という学術的な意見がある。

 よく言われるように「家庭における借金」と「国の借金」は明らかに違うものであり、国の借金は絶対的に返さなければならないという考えは少し間違っている。

 家庭での借金は、基本的に誰かが働いて得たお金を借りているということなので、それは人道的にも返さなければいけない。これは当たり前。しかし、国の借金というのは、誰かが働いて得たお金というわけではなく、単に増刷したお金(注意:印刷したとは限らない)であり、原価は微々たるものだ。

 誤解を恐れずに極論すれば、そのお金を将来世代から借りているということにして「借金は返さなければならない」ということになっているだけ。なぜそうなっているのかというと、そうでもしないと現代の貨幣が無から有を生み出す錬金術的側面を持っていることが表面化してしまうからかもしれない。

■「信用創造」の有無で変わるお金の常識

 お金そのものに金銀財宝と同じ価値があった時代と、そうでない時代(現代)では、お金の本質が変わってくるため、お金の認識自体も改めなければいけない。

 個人が他人にお金を貸す場合、現物資産としての現金が無ければ貸すことはできない。あなたが友人に100万円を貸す場合、本当に100万円を持っていなければ貸すことができない。しかし、銀行がお金を貸す場合は、少し話が違ってくる。例えば、銀行の金庫に1億円しか無くても、2億円を貸すこともできる。この場合、本来、存在しないお金を貸しているのに、2億円+利子が銀行に返済されることになる。
 1億円しか無くても、2億円を貸して、2億円以上が返ってくる。これを「信用創造」と言うが、こういうことを個人が行えば架空のお金を貸したということで詐欺罪になる。しかし、銀行なら合法的に可能となる。

 ここで述べた「銀行」を「国」に置き換えても同じことが言える。

 人間としての生きる目的を失ったかのような怠惰な人の精神を鼓舞するという意味で「働かざる者食うべからず」と言うことは理解できるし、人間として借りたお金を返すのは当然だという意味で「借金は返さなければならない」と言うのもその通りだと思う。

 しかしながら、先述した通り、その前提自体が間違っていた場合、必ずしも、そういった戒めの言葉が正しいとは限らないのである。

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posted by 自由人 at 23:54 | Comment(0) | 経済
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