2021年12月11日

捉え方で変わる「10万円給付」問題


■「現金の方が良い」は公の意見ではなく個人の意見

 件の「10万円給付」問題で、現金給付が良いか、それとも商品券給付が良いかと、喧々諤々の議論となっている。

 大阪市の松井市長は、記者会見の場で記者達に対して次のような質問をした。

 「商品券の方が良いと言う人、誰かいますか?

 これを聞いて、商品券が良いという記者は誰もいなかった。

 しかし、これは当たり前であり、誰でも(私でも)「現金の方が良い」と答える。

 「商品券と現金のどちらが良いですか?」という質問に対して、「商品券です」と答えるような酔狂な人は皆無だろうと思う。利便性という意味では、お金に勝るものはないからだ。しかし、それはあくまでも個人としての意見である。
 
 「10万円給付」を個人の問題として捉えれば、現金給付に軍杯が上がる。しかし、全体としての景気を良くするという問題として捉えると、現金よりも商品券に軍杯が上がることになる。

 商品券給付は余分な経費がかかるという意味でも、財政再建派には認め難い話かもしれないが、景気を良くするという目的を達成するには商品券の方が良いことは、ほぼ100%間違いない。

■「腐るお金」としての商品券の価値

 かつて、ドイツの思想家シルビオ・ゲゼルは、以下のように述べたとされる。

 「あらゆるものが減価するのに通貨だけが減価しないために金利が正当化され、ある程度以上の資産家が金利生活者としてのらりくらり生きている

 こういった現状を解決するために、ゲゼルは「スタンプ貨幣」というものを発案した。

 この「スタンプ貨幣」は「ゲゼルマネー」とも呼ばれ、かつて、地域通貨としてドイツやオーストリアで使用されていたらしい。その特徴は、どんどん価値が下がっていく(減価していく)お金というものだった。つまり、使用期限のあるお金のことであり、ある意味では、商品券のようなものだったとも言える。

 ケインズもゲゼルの経済思想についてこう述べている。

 「将来の人々はマルクスの精神よりもゲゼルの精神からより多くのものを学ぶであろうと私は信ずる

 この「ゲゼルマネー」というものは、西野亮廣氏のアニメ映画『えんとつ町のプペル』でも描かれており、「腐るお金」という話が映画内に出てくる。

■「腐らないお金」としての現金の問題点

 現代の「腐らないお金」としての現金は、給付されてもすぐに使用する必要がないため、特に目先のお金に困っていない多くの人々は貯金を選択することになる。ゆえに、いくら腐らないお金を配っても一向に景気が良くならず、無駄金に終わってしまう。

 商品券を配るのは余計な経費(無駄金)がかかると批判する向きもあるが、その無駄金と言われるものは、景気が悪いとされる印刷会社等の利益にもなるわけで、巡り巡って様々な民間企業への慈雨ともなる。一部、利権でピンハネを企む悪徳な人々がいることも否定しないが、そんなマイナス面ばかりに目を向けていると何もできなくなる。

 今回の「10万円給付」は子育て支援という側面もあるのかもしれないが、基本的にはコロナ禍対策(景気刺激策)の一環であるわけだから、個人の視点ではなく、公の視点を持つ必要があるのではないかと思う。



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posted by 自由人 at 09:41 | Comment(0) | 経済